インプラントで死亡事故も！医師の解剖学的知識不足による失敗

日本でインプラントによる死亡事故が起こっています

インプラントは適切な治療を行えば、成功率の高い治療方法です。しかし、インプラントについての知識や解剖学的知識を持ち合わせていない医師もインプラント治療を行うようになり、失敗の報告も増え、死亡事故までが起こっています。
インプラント治療において未熟な医師による失敗の報告は少なくありませんでしたが、この死亡事故は、多くの症例を持ち、経験を積んだ医師が起こした事故だということでも、衝撃的だったと言えます。

インプラント治療は、一般歯科診療とは異なり、解剖学的知識が必要になります。そして、適切な検査の実施など、経験を積んだ医師であっても、安全性の徹底が不可欠なのです。

インプラントで死亡事故が起きた原因

インプラントの死亡事故は、2007年東京中央区の歯科医院で起きました。複数本のインプラント埋入手術において、下顎のドリリングの際、動脈を損傷してしまったのです。

インプラント失敗で重大なものに、神経の損傷と動脈の損傷が挙げられますが、動脈の損傷は生命に関わります。下顎の動脈を損傷すると、口腔底に血液が溜まり、膨らんで気道をふさぐことによって、呼吸ができなくなってしまいます。
下顎には舌下動脈・オトガイ下動脈が走行していますが、これらの動脈を損傷してしまうと、大量出血による窒息死を招いてしまうのです。

この事故の裁判では、「動脈損傷の可能性を事前に認識できたか」という点が争点となりました（動脈損傷の可能性は、事故当時も指摘されていたことです）。

「医師の解剖学的知識の不足が招いた事故」と言っても間違いではないでしょう。インプラント治療は、一般歯科治療とは異なり、医師の十分な知識と経験、技術が不可欠なのです

フラップレス手術であったことも原因の一つ

一般的なインプラントの埋入手術は、歯肉を切開して剥離し、歯槽骨にドリルで穴を開けます。しかし、フラップレス手術の場合は、歯肉を切開・剥離することなく、歯肉の上から歯槽骨にドリルで穴を開けるのです。
フラップレス手術は、腫れが少ないなどのメリットもあるのですが、骨幅などを目で確認できないため、ドリルを貫通させてしまう可能性もあります。十分な検査を行い、適切な症例にのみ行える術式です。

インプラントの死亡事故は、このフラップレスという術式によるものであり、骨幅を十分に確認できなかったことも、インプラントの貫通・動脈損傷につながったと言えます。

ＣＴ撮影を行っていませんでした

ＣＴ撮影は、今やインプラント治療において不可欠な検査の一つとなっています。しかし、この事故ではＣＴ撮影を行っていませんでした。
インプラント治療は多くの歯科医院で行われていますが、全ての医院でＣＴスキャンを設置しているわけではありません。死亡事故の起きた医院では、ＣＴを設置していながら、この症例においては、撮影を行っていませんでした。

重大な事故が起こり得る下顎のインプラント治療は、ＣＴ撮影で動脈や神経までの距離を把握することで、損傷を防ぎ、安全な治療が可能になります。
熟練の医師であっても、安全性を高める検査を怠ってはいけないのです。

インプラントはリスクの伴う治療法ですが、リスクを防ぐことも可能です

インプラント治療による事故や失敗を知ると、インプラントに対して「危険」「怖い」というイメージを持ってしまう患者様もいるかもしれません。
しかし、十分な検査を行い、適切な術式を選択し、正確な治療を行うことで、手術の失敗やリスクは防ぐことが可能です。

近年は格安インプラントも登場し、費用で歯科医院を選んでしまう人も少なくありませんが、安全性を第一に考えた適切な歯科医院選びが、インプラントの成功につながると言えるでしょう。